カンガルーな日々

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<<   作成日時 : 2009/01/27 14:20   >>

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長男がまだあどけなかったころ。
将来の夢をたずねると、
「大きくなったらカエルになりたい」
と言っていた。
そんなかわいった彼も順調にクソガキの階段をのぼっており、今では
「おしりぶりぶりソーセージ〜」
とか言うようになってしまった。
それを言うならちんちんぶらぶらやろ、とついつっこんでしまうのは関西人のサガか。

長男のカエルフィーバーは長らく続いていた。
ちょうどその時期が、入園グッズを買い揃える時期と重なったので、通園バッグやランチクロスなどはカエルでそろえた。
巾着袋も、カエルの柄の布でつくった。
しかし、皮肉なことに、入園グッズがほぼそろったころに彼のカエルフィーバーは冷めてしまった。
世の中そんなもの。

それでも長男は喜んでカエルグッズで登園していたのだが、最近になって、カエルのランチクロスと巾着袋をいやがるようになってきた。
丸2年使っているので色あせてきてるしボロボロだし、そろそろリニューアルの時期ではある。
これを機に作りかえる(or買いかえる)のもちょうどいいか、と思い、ではカエルじゃなかったら何だったらいいのかたずねると、しばらく考えてから、
「ポケモンがいい」
と答えた。
そうか、それならピカチュウのやつを探してくるね、と言ったら、
「ピカチュウじゃなくてギラティナにして」
と注文をつけやがる。
かわいくないぞ!

そもそもなぜ突然カエルがイヤになったのかたずねてみると、
「だってソウタ君が、カエルは弱いからダサイって言ったから」
ふむふむ、なるほど。
じゃあ、なんだったら強いの?
「ソウタ君はね、ゴーオンジャーがいちばん強いからいちばんカッコイイっていう」
なるほど、なるほど。いかにも年中児らしい会話ではある。
「でもねぇ、ぼくはゴーオンジャーは嫌い」
へぇ。どうして?
「だって、おもしろくないもん」
ずこっ!
ヒーローはおもしろくなくちゃいけないのか?

それで長男はどう答えたのか聞いてみた。
「ゴーオンジャーよりもガンちゃん(ヤッターマンの主人公)がいちばんカッコイイって言った」
ケンダマジックのまねをしたら、みんなも納得したそうだ。

それで一件落着したならいいではないか、と思ったら。
どうも、彼の中ではまだ何かくすぶる思いがあったようだ。
「ねぇ、アンパンマンってダサイよなぁ?」
と突然言ってきた。
「そうかなぁ。お母さんはダサくないと思うけどなぁ」
「アンパンマン、ダッセーよ」
「ふうん。どうしてそう思うの?」
「だって、アンパンマンは弱っちくってダッセー、ってみんな言うもん」
ソウタ君もコウキ君もみんなそう言うよ、と言う。
アンパンマンのどこが弱っちいのか問うと、
「だって、顔がぬれただけで力が出ないから。そんなの、弱ぇーよな」

ああああ、この子もこんな言葉遣いをし、周囲の反応を気にするようになったのか。
ほんの数カ月前までは、周囲が「ぷぷぷっ、まだアンパンマンなんか好きなの?」とあからさまに笑っても「うん、だってぼく、アンパンマン好きだもん」と堂々と答えていた長男が。
「弱っちい」だの「ダッセー」だのと言うようになったのか。

彼のクソガキぶりを目の当たりにして、たしかに少し寂しくもあったけど、それよりもうれしくて、頼もしくもあった。

すると、私たちの会話をずっと聞いていた次男が、
「ノムはアンパンマンがいっちば〜ん♪ だってアンパンマン、やさしいもん」
と、アンパンマンのオモチャで遊びはじめた。
「でもガンちゃんもやさしいよ」
ムキになる兄に、
「でもアンパンマンはやさしいもん」
「お兄ちゃんはピカチュウも好き。だってピカチュウは百万ボルトで強いもん」
「ノムはアンパンマンが好き。おいしいもん」(食べたことあるのか?)
「あっ、お兄ちゃん、リザードンも強いから好き!」
「ノムはアンパンマ〜ン♪ だってやさしいも〜ん♪ おいしいも〜ん♪」
こういう時の次男は強い。
余裕というか、ゆとりが違う。
結局、長男がひとりでムキーッと空回りして、最後は
「アンパンマンは強くないったら強くない! ぼくはアンパンマンは嫌い! ガンちゃんがいいの!」
と地団駄を踏んで終わった。

そんな、泣かんだかて……。
と私は笑いをかみ殺していた。

その夜。
次男の寝息が聞こえてきたし長男もそろそろ寝たかな、と思っていたら、
「ねえ、お母さん。アンパンマンって本当はいちばん強いんだよ」
と長男がムックリ起き上がった。
なんだなんだ、まだ寝てなかったのか。
っちゅうか、まだその話かいな。

「ぼくねぇ、ゴーオンジャーもガンちゃんも百万ボルトもみんな強いけど、アンパンマンがいちばん強いと思う」
布団をかぶりながら、長男はきっぱりと言った。
ふうん。どうしてそう思うの。
「だってねぇ、アンパンマンはおいしいもん。そしてやさしいもん」
なるほど。
おいしい上にやさしいとなれば、そりゃ、鬼に金棒だねぇ。
「ぼくねぇ、さっきアンパンマン嫌いって言ったけど、本当はちょっと好き」
こっそりと照れるのがかわいくてかわいくて。
「あらそう。じゃあ、ランチクロスはアンパンマンのにする?」
と試しに言ってみると、そこはやっぱり
「やだ。ヤッターマンかポケモンがいい」
ときっぱりと言われた。
「どうして? 本当はアンパンマンが好きなんでしょ?」
とからかうと、
「本当はアンパンマンが好きだってことは、ぼくとお母さんのひみつね」
と言う。
そうかそうか、二人だけのひみつか。
よしよし、ないしょにしておいてあげるからね、と言うと安心したのか、長男はその後すぐに寝た。
ナマイキなことを言うようになっても、やっぱりまだまだかわいいなぁ、とおかげでその日は幸せな夢をみられた。

その数日後。
保育園からの帰り道、長男はまたこの話をぶり返した。
「ぼくが本当はアンパンマンがいちばん好きだって言ってね、だっておいしくってやさしいから一番強いぜって言ったらね、ケン君がね、ぜんまいざむらいが一番強いって言った。ぜんまいざむらいはおもしろいから強いんだって。やさしいのとおいしいの方が、おもしろいのより強いのにね!」
おいおいおい、アンパンマンが一番ってのは、私とだけのひみつじゃなかったのかい。
というツッコミはさておき。
おいしい vs. やさしい vs. おもしろい
これは手ごわい勝負である。
「おいしいのが一番!」
と食いしん坊の次男が叫んだが、長男は
「でもやさしいのが一番強いよ」
「でもお父さんはおもろいのが一番って言うし……(←いつのまに夫とそんな会話を??)」
と、大いに悩んでいる風だった。

ところでランチクロスはどれが欲しいか決めたのか?
「えっとねぇ、カエルでいい」
「ほぉ、どうして? カエルは弱くてダサイからイヤなんやろ?」
カエルはべつにおいしくもやさしくもおもしろくもないぞ、と追い打ちをかけてみた。
すると長男、ぼそりと、
「でも好きだからいいの」
と言った。
「みんなにダッセーってバカにされたらどうする?」
「そんなこと言う方がダッセーよ、って教えてあげる」
ほおぉぉぉ、そうきたか。
「だってぼく、カエルが好きだもん」

ふむ。
もしかすると、いちばん強いのは「好き」かもしれないな、とちょっと思った。

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